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2015年11月17日 (火)

読物 『海賊と刺繍女』

キャッチーなタイトルに惹かれなかったならば、少なくとも原題"The Tenth Gift"だったならば、手に取ることはなかった。いつもなら邦題については云々というところだが、本作品の場合、原題にたいした意味がこめられているわけではないように感じられるので、思うところはない。

本作品に登場する海賊は「コルセール」と表記されている。コルセールと聞いて海賊という和訳はなじみのないものではない。どこで聞たのが初出であったろうかとずっと悩んでいたが、やがてワイヤーフレームが脳裏に浮かび上がり、ダイヤモンドの騎士における「コルセア」がそうであったことを思い出した。あまり育てなかったキャラを移動したもんだから、コルセアあたりが出現するエリアでは随分と苦しめられたことも。

著作物を通してのことなので一般的な通念であるかどうかはわからないが、欧米の人々は、中世アラビアとモンゴルに強い憧れと恐れを抱いているように感じられる。モンゴルについては恐るべしのみかもしれない。
そうした作品では宗教の対照がなされることはしばしばで、概ね、あらゆる面から見て五十歩百歩、人類の所業に人種や宗派の別はないというふうに語られるようだが、一方で、キリスト教に関わる出来事が非常に政治的であるという強い印象も抱かされる。逆の視点を得られる機会があればよいのだが、なかなかに訪れない。アラブ発のファンタジーでもあったら読んでみたいところだ。

本書の主人公は二人。
一人は現代に生きる英国人女性。三十代で、刺繍で身を立てており、独身で、絶賛不倫中。
もう一人は、十七世紀の英国、その片田舎で召使いをやっているハイティーンの女性。刺繍に優れた才能を示し、自覚していて、それで身を立てることを願っている。それが叶いがたい願いであると感じており、それを阻むものの象徴として変化の乏しい故郷を毛嫌いしている。主人の決めた相手、同じ主人に仕える召使いの若者との婚約に絶望中。
二人をつなぐのは『お針子の喜び』という本。十七世紀の少女が婚約者からプレゼントされた本で、現代の女性が不倫相手から手切れ金代わりに渡された本だ。その本にしるされた少女の手記、数奇な運命の記録を軸に、過去と現代で、対称性はあるが同期性のない物語が進む。

登場する事物が全て因果を含んでしまうという点で『ダビンチ・コード』っぽいご都合さが感じられるが、物語の大仕掛けはそこまでうさんくさくなく、小さくまとまっていて、全体的に生臭いが、好印象である。

邦題に思うところはないといったが、「刺繍女」と書いて「ししゅうおんな」というルビだけはなんとかならなかったものかと思わなくもない。それっぽいものが一世を風靡してから五年以上経っているのだから。

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