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2014年6月

2014年6月27日 (金)

読物 『不実な美女か貞淑な醜女か』

エッセイを好んで読むことはあまりないのだが、皆無というわけではない。『ロシアは今日も荒れ模様』がとても面白かったので、他の著作が気になり手に取った次第である。

本タイトルの意は、通訳という業に対する業をあらわしたものだという。


中村保男氏著『翻訳の技術』(中公新書)によると、これはイタリア・ルネサンスの格言「翻訳は女に似ている。忠実なときには糠味噌くさく、美しいときには不実である」に由来するし、辻由美著『翻訳史のプロムナード』(みすず書房)によれば、十七世紀のフランスで訳文の美しさで人気の高かったペロー・ダブランクールの翻訳を大学者のメナージュが評して、「私がトゥールでふかく愛した女を思い出させる。美しいが不実な女だった」と述べたことに始まるらしい。この時以来 Belles Infidéles(不実な美女)というフランス語は、「美しいが、原文に忠実ではない翻訳」を指して用いられるようになったということだ。

P.147



顧客の業務を咀嚼し、相互に理解可能な文書をおこして合意を得、コンピュータが理解する言語を記述する。我が身の業はプログラマーだが、本書から通訳・翻訳と似たところがある業種だと覚えた。顧客の要望を聞くときが通訳、要望を仕様化したり実装したりという作業が翻訳、という印象である。
顧客要望の聞き取りは即時性を要する作業ではないので通訳的であってはならない行程だと思うのだが、金銭的綱引きによるものか、人材的要因によるものか、顧客自身が自らの業務を理解していないためか、結果的にそのようになってしまう。合意を得た後に誤解が出現することによることからそう感じるわけだが、これは翻訳のミスによるよりも、異言語間のコミュニケーション齟齬に由来すると体感するところである。
かような印象を得てしまったためか本書に記された失敗談や愚痴には、大同小異のあるある感で苦笑を禁じ得なかった。


2014年6月23日 (月)

読物 『化石の分子生物学』

化学のコトバが混じっていると、まるでアカン。そんなことを確かめさせられた。
サイモン・シンやジャレド・ダイアモンドのように、ノータリンにもわかりやすく学問を説いてくれる書ではなく、ある程度の化学の素養、少なくとも化学式に拒絶反応を示さない程度の、あるいは高分子と聞いてピンとくる程度の素養は必要であろうと思われる。

似たようなところだと『眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く』は、「気配を察知する」ことへの個人的妄想を得るなど面白く読めたのだが、本書からは、表題の学問には確定的な指標はなく暫定的な指標の随時更新があるらしいということを理解したにとどまった。

2014年6月16日 (月)

読物 『ディープな戦後史』

小学校でいう社会、やがて歴史や地理となる科目は、学生生活を通して苦手だった。『三つ目がとおる』をはじめとするSFないしはオカルティックな古代史に興味を持ちながらも、学業として楽しんだことはない。
この科目に限らず暗記を要するものはいずれも不得手で、理系に進んだのは得意だったからというよりは消去法だったのかもしれない。

主に小説によって歴史や社会というものを意識するようになってからは、物覚えはあいもかわらずながら、面白いと思うようになった。学業生活を終了したのち苦手意識を払拭しえた経緯をもつ劣等生の観察としては、試験というものは、ふるいにかけるという一次的要素を、採点側の都合という副次的要素で濁しているのではないかと感じなくもない。

本書は、一橋大学の受験問題を題材に、太平洋戦争から現代につながる時事について解説している。
劣等生の目には、題材となる試験問題は歴史として表出する時事の背景にどのような事情があったのか咀嚼していなければ回答できないものと見えた。
このような出題は、受験生の大多数を占めるであろう高校生に対して過酷であろうという意見があるらしい。確かに過酷であろうと思う。だが、大学受験の段階でこの関門に望もうという意志を持ち得るということは、それだけですでに撰ばれているような気がする。

読物 『マージナル・オペレーションF』

短編集。
現時点でのシリーズ最終刊にあたる第五巻後のエピソードを含んでおり、シリーズ継続を色濃く匂わせてつつ、検討課題を残しているため未定という様子。

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