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2014年3月14日 (金)

読物 『ベスト&ブライテスト』

 世界の緊張を少しでも緩和させる自信と確信にあふれ、周囲を睥睨するようにさっそうと登場した新政権は、国内的、対外的配慮から必要以上に好戦的な姿勢を示さざるを得なくなった。そして、初期のこのような軌道修正をはじめようといた一年半後、ケネディ政権はすでに、ベトナムへの介入を深めていたのである。
 ある意味でキューバ事件は、一九六五年のベトナム戦争エスカレーションのリハーサルであった。ケネディにもジョンソンにも、それぞれの侵攻事件があったということができる。ケネディの事件は四日で終了したが、ジョンソンの事件は四年かかっても終わらなかった。だが両者には共通する要素があった。
 非白人社会の希求と願望を完全に読み違えたこと、西欧的白人社会の主義主張を、それぞれがなじまぬ社会に持ち込んだこと、政策決定機構がその立場を追求し正当化するために、国家全体の利益を犠牲にして勝手に突き進んだこと、相手の国や自分の国についてさえ驚くほど何も知らないにもかかわらず、専門家をもって任じた人びとがあまりにも秘密主義に走りすぎたこと、政府内で然るべき権限をもたない人間があまりにも多くの決定をくだしたこと、道徳的配慮をあまりにも欠いたこと、そいてなかんずく、あまりにも常識に欠けたこと、などである。

文庫版上巻 p.148

 事実かどうかとはまったく無関係に、米中関係はきわめて特殊なのだという神話が生まれ、広がっていった。われわれは彼らを助け、彼らを導いた。そして彼らはわれわれを愛している。キリストの福音を待ちこがれているあのエキゾチックな国での宣教活動を支えるために、子供たちは教会で献金し、何百万と集められた一セント硬貨の浄財がこの神話をさらに大きくしていった。中国はいい国だ。中国人はわれわれと違うけれども、またわれわれに似たところもある。これほどロマンチックでしかも安全な幻想があるだろうか。日本人は悪い。ずる賢い。信用がおけない。中国人は善良で信頼できる。
 中国を蹂躙する日本、中国人を救出するアメリカ戦闘部隊、傷ついたアメリカ空軍パイロットを手当てする中国のうら若き看護婦、そしてもちろん、彼女らに恋するアメリカ兵、このようなテーマの映画が氾濫し宣伝が強化された戦争のあとで、中国の崩壊はショックであった。われわれを愛してくれたあの中国に何が起きたのか。これは、平和が厳しい冷たいものであることを証明し、アメリカの悪魔論信仰における主役の交代をもたらしたのであった(戦時中のよいロシア人、悪いドイツ人、よい中国人、悪い日本人から、戦後のよいドイツ人、悪いロシア人、よい日本人、悪い中国人)。
 中国の崩壊に対してアメリカは心理的な用意ができていなかった。
 混乱したこの国が、いけにえのヒツジと陰謀者を探し求めたのも無理からぬところであった。自分では思うようにならないことがあり、われわれが住んでいるのは不完全な世界なのだ、ということを認めるよりも、この方が容易なのであった。

文庫版上巻 p.242

太平洋戦争とはなんだったのか、朝鮮戦争とはなんだったのか、そんなことを思いついていろんな情報にあたりはじめ、視点によって解釈が異なることだけを理解したのみで、結局なんだったのかわからないままに、ベトナム戦争とはなんだったのかということを思いはじめた。
ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争』の著者が記した他の書籍を求めたことがきっかけだったが、すぐには手に取れなかった。図書館に蔵書がなく、古書の出待ちをしたためで、その程度の興味といってしまえるわけだが、きっと答えは得られないだろうという思いのためでもある。

並行して読んでいる別の書籍からは、独ソ戦においてソビエトがものすごい被害を出しながらも勝利し得た理由というか背景も気になりはじめ、歴史というものは興味が尽きないが、知ることによって虚しさが増すばかりだと感じ入る次第である。

さて、本書はベトナムに兵力を派遣した背景にはアメリカ国内の政治と国際的体面に大きな理由があるとしている。
決定に関わった人々はエリート中のエリート、アメリカ最高の頭脳と称されながら、落としどころに目算をつけずに、面子と保身のために判断を下していったと読める。別の情報によれば、東南アジアにおけるアメリカの権益拡大が目論見にあったとされるが、それについては触れられていない。
同様のことは『アメリカの鏡・日本』の読後にも感じたことだ。国力差9分の1の国家に勝利してあたりまえというようなことは書かれていても、中国におけるアメリカの利害という点については触れられていない。

遙か彼方の土地に木があり、実がなっている。特にその実が欲しいわけではないが、人にくれてやるのは惜しいから落ちてくるのを待った。木がどんな栄養を吸っているか知らない。木がどんな実を落とすか知らない。知るべき事を知らず、見たいものしか見ずに、落果をただ待ち続けたが、実は落ちずに腐った。見ていなかった実は実ったようだ。
本書が述べるベトナム戦争とは、そんなカンジだったらしい。

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