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2012年4月24日 (火)

読物 『虐殺器官』

知っていること、知らないことが物語の楽しみを左右する場合がある。
知っていると感じるが故に高みから見下ろしてしまったり、知らないが故に嫌ってみたり。
修業が足りない。

この物語を読んでいる間にも、前者の心情が幾度も我が身に訪れた。作品の中に、かつてこの身に痛撃を受けた諸作品の影響を感じたりしたときのことだ。それは別にどうというものではないのだが、いつの間にか身に染みてしまった展開の先読み癖とともに働きだして、物語を純粋に楽しむことを阻害する場合がある。
この働きを鈍らせるのは物語の持つ力しかない。高みに登ったつもりになったときに、打ちのめされるしかない。

思うところは多々あれど、言葉に顕すことになんら意味をもたないと思うことがある。どうでもよいところを一つ選ぶならば、『パイナップル・アーミー』で最も印象深い登場人物だった「冷笑を浮かべた東洋人」と、久々に再会した気分である。
これはそんな作品であり、現時点で本年度に読んだなかで最高の物語だということだけ覚書するにとどめる。

蛇足。
あとがきによれば何人もの作家が本作品の影響を受けているという。昨今読んだ中で面白かった『マージナル・オペレーション』も、間違いなく本作品の影響下にある。

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コメント

通りがかりの者ですがおじゃまします。
自分は伊藤計劃氏の死後この本を知り、なんとすごい人がいたことか、そして今はいないことか、と衝撃を受けました。
この人の「新作」をもう読むことができないのがとても残念です。
円城塔氏が未完作品を仕上げる予定ときいていますがどうなることでしょう。

伊藤計劃さんのブログはまだ残っているんですよ。最終ページにはたくさんのファンの方からの書き込みが今も続いているようです。ご存知かもしれませんが。
http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/rss

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