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2012年3月26日 (月)

読物 『ARIEL 全二十巻』

「まあ、あの時は炉心誘拐[チャイナ・シンドローム]やら水蒸気爆発[チェルノブイリ]やらやらずにおさまりましたが――今回は何だってんだ」
第二巻 P.140

「組織が小さいといっても、スペクターやスラッシュ、ギャラクターなどという超巨大組織にくらべれば小さいというだけで、決して展開力やスケールが小さいというわけではありませんぞ。秘密の地下基地から衛星軌道上の宇宙戦艦まで揃えた守備範囲の広さといい、水源への毒物混入から園児バス乗っ取り、株式操作やクソ映画制作といった経済戦争まで手がける戦略の幅広さは、どんな巨大組織にも負けないと自負しております。これからの秘密結社には確かな経営戦略と着実な目的達成が欠かせませんよ」

第四巻 P.219

 それまでなにも耳に入っていない風で悠然と食後のどんぶり酒をかっ喰らっていたセイバーが、ちゃぶ台からちょいちょいとハウザーを手招きした。
「なんだ?」
「耳を貸せ」
「ふむ?――ふむ、わたしは戦場を選ばぬ主義だが、女子高とその周辺だけには近付かぬようにしている? あの極彩色のパワーにだけはどんな手段を用いても勝つことなどできない、だと?」
 おったまげた顔で、ハウザーはセイバーから耳を離した。
「おまえのその常識知らずの人間離れした無敵パワーでも女子高生には勝てんというのか!?」
「勝てぬ」

第五巻 P.30

「宇宙船にギアなんてあるのか?」
「一速が地上走行、二速が空を飛ぶとき、三速が宇宙空間低速、四速が高速用です」

第七巻 P.39

「落ち着けシモーヌ! いったい何のためにビームガンを抜いているのだ君は!?」
「あるんですねえええ!!」
「こんなところで出力最大の上に、安全装置まではずしてどうする気だ!!」
「隠し立てしないほうが艦長の身の安全を保てるかと存じますが」
デモノバ[お ま え]までなにを言い出す。早く経理部長を止めんかああ!!」

第九巻 P.79

「あとのことを考えてみろ」
 ハウザーは声をひそめた。
「出来るかどうかはともかく、シモーヌに経済学など教わってみろ。我々は金輪際戦闘など出来ないからだにされてしまうぞ」

第九巻 P.208

『つまり、宇宙人のコンピュータは我々のコンピュータとばっちり互換性があるということだ!』
 美亜はほけっと口を開いた。
『従って、こちらから侵入しても、向こうが合わせてくれるのでなんの問題もない! 進歩し過ぎたコンピュータを備えているのがうぬの不覚よ、目にもの見せてくれようぞ!』

第十二巻 P.209

帳簿をインプットするとコンピュータが暴走する。論理的に破産しているゲドー社、うまい。
息の長い作品には確認できることだが、SF作品における通信媒体やコミュニケーション手段に具体性を与えたテクノロジーとして、このシリーズにも携帯電話とインターネットの影響が見受けられる。SFという分野において、いかにインフォメーションテクノロジーが未開だったかがよくわかる。

などと楽しんでいられたのは序盤も序盤で、だいたい4巻あたりでタイトルは意味を喪失し、『ゲドー戦記』の様相を呈し始める。なんで登場することになったか分からないタイムトラベラーのエピソードとゲドー戦記を繰り返し、うだうだな終盤へ。物語は軸を喪失して、次々とワイルドカードが投入される。
ロケット話はどこから火をつけられたものか。地球側は航空宇宙学話、エイリアン側は現実世界におけるインフォメーションテクノロジーをSF風味づけした話となる。そっち方面のディテールを掘り下げるしか、原稿を埋めるすべがなかった、とでもいうような。

二十年くらい前にソノラマ文庫版で四巻くらいまで読んで、特に続きが読みたいわけではないが展開は気にしていたという作品だったが、そんな思いに、ようやく終止符を打つことができた。
この作品を評するにラノベの祖という向きもあるようだが、まあそうかもしれない。

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