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2012年1月 8日 (日)

読物 "ROSE OF PROPHET"

「――スルの真実はクアル神のなかに見える」神官[イマーム]がいっている。「唯一の真の神を崇拝することでひとつに結ばれた世界。精霊たちの奇行や干渉から解放された世界。さまざまな相違が一様に均され、すべての民が同じ思想、同じ信仰をもつ世界――」
 みんながクアル神と同じように考え、信じる世界か、とカールダンは胸の奥でつけくわえた。
「戦う原因が消滅したため、戦は過去のものとなり、平和がおこなわれる世界。人間が互いに思いやり、飢える者などいない世界」
 つまり、奴隷を有効に使うために彼らを大切にし、飢えさせるなどまかりならぬということだ。たとえ金の鎖でも鎖は鎖、どんなに肌によく映えてもである。
第六巻 P.230

読み返す前に記憶に残っていたのは、アクラン神のジン、ソンドの名だけだった。
読み返してみれば記憶は蘇り、固有名詞にはたしかに覚えがあると感じられるものの、物語はまるで記憶にない。
初読から、十七年ぶりくらいになる。

邦題『熱砂の大陸』。
どれだけこの物語に触発されたか、即興セッションにとはいえ、自キャラに既製キャラの名前をつけたことからも明かである。普段はそんなことはしない。もちろん、いてこましたろーか、とか、そんな名前をつけたりもしない。栗本薫――好きな作家ではなくなってしまったが――から受けた薫陶がおそらく、命名に対する義務感を生じさせているのであろう。

とはいえ、物語そのものはそれほど好きではない。『ダーク・ソード』と同じ印象を抱かされている。共通する一種のgdgd感は、アンチ・ヒロイックファンタジー的風潮の副産物なのかもしれない。ヒロイックの象徴とされる蛮人コナンとてご都合ヒロイックでもなければ脳筋でもないのだが、おそらくはその亜流がそうであったのだろう。
触発されたのは、物語の世界構造だ。二十面体と十二面体が世界を象徴するというメタな隠喩あるいは創作側のお遊びはさておき、"The Planes of Power"にも間違いなく影響を与えたであろうTSR的神話観がこれほどよく表現された作品を他に知らない(訳書が限られてるからネ)。
大学時代に発症していた厨二病は間違いなくこのあたりから感染している。

さて、モノゴトには歴史があるが、日本におけるTRPGの発展にも歴史がある。
そうしようという恣意からなされたものでなく、そうなってしまうのが歴史というもので、いたしかたのないことではあるが、いくつかどうにも受け入れがたいことがあって、その一つにセンスのかけらもない命名というものがある。

代表例をあげれば、「魔法戦士」。正確には「魔法使い戦士」ないしは「戦士魔法使い」であり、魔術も武術もこなすキャラクターを表現するために用いられる。なにをどう略したのか、どのようなことを示しているのか察することは容易だが、個人的にはこの語を飲み下すことは容易ではない。的確でない省略にはどうも著しい不快感を覚えてしまう。
この物語で何故この例が問題になるかというと、「魔法女」という訳が使用されているからである。原文では"Sorcerer"または"Sorcereress"と表記されていたのであろう。魔女という語を敢えて使用しなかった理由は行間から察せられる――物語に登場する、とても大物な女性の魔法使いをただひとり特別に「魔女」と表記したかったためであろう――が、いかにもSNE的なニオイを発するこの造語は、目にするたびに拒否反応を生じさせられる。
女魔法使いと書くのがいやならソーサラーと書いときゃいいだろ。女しか魔法を使えない部族なら、魔法使いと書いておけば自動的に「女だな」とわかるし、どうしようもない造語を使う理由がカケラも――カケラくらいは見つかる。邦題『熱砂の大陸』は、当時富士見書房の人気シリーズだった某作品を意識したとしか思えない。つまり、あやかった、ということだ――見つからない。

命名の問題つながりでいうと、タイトルというものはかなり重要である。
センスのある邦題が希であるというのは映画由来だろうか。たいていの映画がそうであるように、書籍のタイトルにも重要なメッセージが込められている。キャッチ―な命名はそれを踏みにじっている。
どんな権威がそれを成しているのかわからないが、単なる慣習ならただちにやめていただきたいものである。

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