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2011年4月16日 (土)

読物 『闘神 ――伊達順之助伝――』

 材料を何にするか。馬やロバしか手ごろな肉の材料がないが、これでは大してうまくない。広東地方では、蛇や、犬や、白鼠が、珍重されるが、北方ではあまり歓迎されない。
 それでまず、世界中を股にかけて歩いている海軍士官でも、絶対喰べたことのない、陸ふぐ(おかふぐ)の珍味を御馳走しようということに決まった。
 その材料は猫である。兵隊に命じて、あちこちで、猫を捕まえさせた。忽ち、十二、三匹も捕まえてしまって、全部麻袋にほうりこんで、まとめて運んで来た。
 料理は腕に自信のある、根本中校(中佐)が自ら引受けることになった。
 根本中校はこの猫を一匹ずつ袋から出しては手際よく料理して行く。
 まず猫を梯子に縛りつける。後肢の内側に小さな傷をつけて、そこへ自転車の空気入れの先を突っこみ、空気を力一杯入れる。皮膚と肉の間にもれなく空気が入りこみ、猫がふわふわと空中に浮くぐらい丸くふくれ上がったところで、しばらくおいてから皮を切るとまるで手から手袋を脱ぐのと同じようにあっさり皮が剥がれる。
 これは漁師が昔から、兎の皮を剥ぐとき使ったやり方だ。
 それから、四肢、胸などの肉を、カミソリの刃で紙のようにうすく切って、皿の上にはり付けて行く。ふぐの肉を大皿に盛る菊作りと同じだ。この刺身が、猫の肉の喰べ方で一番美味とされている。途中で水で洗ったり、血を落とすため水を注いだりしてはいけない。そうすると、まずくて喰べられなくなってしまう。
 薄い肉なのので皿の模様がすけて見える。肉の色も並べ方も、本物のふぐ刺しとそっくりだった。
 味も全くふぐと同じだ。それで自治聯軍の司令部ではこれを、『オカフグ』と名づけた。
 紅葉おろしと、ポン酢醤油で賞味する。
 ・・・・・・もう一つ、この材料でうまいのがカラ揚げで、これはできるだけ熱いうちに喰べるのがコツだ。鳥のカラ揚げなどよりは、ずっとうまい。

P.327

伊達順之助の名を知ったのはここ数年のことで、馬賊を扱った書籍の中から見出した。
馬賊を取り扱った書籍の中に取りあげられるくらいだから馬賊だったのだろうと、疑問に思うことはなかった。その書籍に描かれていた、まるで漫画のようなエピソードは、馬賊という語感が示すものにふさわしいと思えたからだろう。

本書は、伝記的小説である。極真会館を扱った漫画に対し、関係者が「筆の冴え」と称したナニが含まれている。伝統的な歴史小説の手法といえばそれまでだが、ドキュメンタリー的なものを望んでいた身上からすると大いに不満だ。
序盤から中盤まではそんな風に感じてもいたが、本書中の表記に従えばシナ事変前後に至って俄然面白くなってきた。

本書によれば、伊達順之助は馬賊であったことは一度もなく、大陸では軍属として過ごしてきたということだ。敗戦で国民政府に処刑された。
順之助は中国に帰化していたが、国民政府は自ら外国人の中国帰化を認めない法を公布したため、順之助の帰化は無効となった。とすれば国民政府が順之助を裁くことはできないように思うが、満州国軍として、日本軍の出先機関として、そうとうに活躍してしまった因果が効いていたのだろうか。
蒋介石の息子・蒋経国は、順之助を活かして八路軍対策を講じていれば別の目もあったかもしれないと、後に台湾で呟いたらしい。

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