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2010年12月31日 (金)

読物 『近代ヤクザ肯定論―山口組の90年』

 何をして食うていくのか

 田岡は、三代目襲名にあたって、三つのことを実行しようと肚にきめていた、と自伝のなかでみずから語っている。
 一つは、組員の各自に職業をもたせることである。
 二つめは、信賞必罰を団結の基本にすることである。
 三つめは、みずから昭和の幡随院長兵衛になることである。
 二の信賞必罰については、「腰抜けや、弁舌の巧みさだけで世間を渡ろうとする泳ぎの達者なやつは、わたしには無用なのだ」といい、三の幡随院長兵衛については、「ちゃんとした職業をもち、義に強く、情けに弱く、つねに庶民の側にたって権力と戦う」ことを目標とするといっている。この冷徹・合理の業績主義(メリトクラシー)と温情・非合理の侠客精神(シヴァルリー)の結合は興味深い。

P.98

 その間の飽くことを知らぬ突破、突出のなかで、柳川組は、先発ヤクザ組織の縄張に割り込む際に放ったという「通れるだけの道を空けてください。いやといわれるなら、大きな岩を動かさなくてはならんことになります」という名台詞を残している。これは、谷川康太郎吐いたことばといわれるが、ドストエフスキーを愛読し、レーニン全集全巻を自宅書斎にそろえて「斜め読みだ」といいながらも、よく読んでいたという谷川は、有名な「ヤクザとは哀愁の共同体である」ということばをはじめ、数々の名言で知られる。そこから見れば、谷川康太郎は、柳川組の行動原理、行動精神のスポークスマンだったともいえるかもしれない。
 みずからアナキストであり、そこから柳川組の行動原理、行動精神に共感を覚えていた猪野健治は、谷川のさまざまなことばを記録しており、そこに柳川組の哲学を見ている。そして、そこに、柳川組の戦闘性の根源がどこにあったのかをかいま見ることができる。
「衣食住が満たされないのは、それ自体が犯罪である」と谷川はいう。これは、「財産とは盗みである」というプルードンのことばを裏返していったものともいえる。アナキズム思想に近い。ここから、「麺麭の略取」まではほんの一歩である。それが、谷川の、ひいては柳川組の行動原理、行動精神の根底にあったということだ。それは、焼け跡・闇市の飢餓線上の行動においてだけではない。鬼頭組との死闘においても、山口組全国制覇の突進においても、やはりそうだったのだ。「麺麭」とは単なるパンのことではなくて、生きるのに不可欠な糧のことであり、生きるのに不可欠な糧とは物質だけのことではない。物質だけではない生きる糧をも、力をもって奪い取るのだ。

P.268

例によって、本書へと至る道のりは忘却のかなた。おそらく『田中清玄自伝』あるいは『疵 花形敬とその時代』からリンクしているのであろう。

宮崎学の著作を読むのは初めてのことで、どのような性向の持ち主なのかよくわからない。印象としては佐野眞一に近く、しかし美学的である。

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コメント

おめでとうごじゃります。

遅ればせながら…。

宮崎学は『突破者』がやたらおもしろくってですね、もう、ゲラゲラで。
その後もいくつかつきあいましたが、最近は、ちょっと、ためにする議論というか、そういう微妙な感じですけどね…。

今年もよろしくお願いいたします。

笑いとばせるような素養がないので、謹んで拝読させていただいております。

とはいえ、きちんと文献にあたっていたり、インタビューしていたり、実体験に基づいているようなところは、無知なる我が身にはツッコミどころもないわけですが、肝心なところが「~だろう」というのが、なんというか。

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