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2010年11月 1日 (月)

読物 『ドラゴンランス秘史3 時の瞳もつ魔術師の竜』

川のゆくえはたえずして、頼んでいたものが到来し、読む機会が与えられる。
機会を逃して悔いを残すという心情を、これまでとは違った感覚で抱くようになった気がして、忙時の気晴らしにはなろうと、とりあえずは手元においた。
たしかに、気晴らしになった。幸せだった過去を、意図せずして回顧してしまう彼の姿に、かつてない共感を覚えつつ。

 

原題"Dragons of the Hourglass Mage"。
困った原題であることは認めよう。邦題について、とやかくいいはすまい。

レイストリン・マジェーレ。
白衣の魔術師であったが、苦痛に満ちた大審問を経てルニタリに見初められ赤衣となり、自らの意思で黒衣をまとった男。
『ドラゴンランス戦記』終盤で、瀕死の状態で消息不明となり、以後本編では語られることなく、ラストで敵方に属するものとして再登場し、おいしいところを全部もっていった。
ゲーム的にいえば、どうみてもレベル5くらいだったのに、レベル20くらいになって再登場し、全てを決したということになろうか。

『戦記』本編では、悪の勢力たるドラゴン軍は、鉄の規律を強いる超人アリアカス――悪の女神の寵愛を受け、軍略に長じ、武術に秀で、魔術を使う――の下、完全無欠であるかのように語られていた。悪であるがゆえの欠点も語られていたが、圧倒的であるという個人的印象はぬぐい得なかった。「悪は自らを蝕む」という言葉の通り、自軍内の政争、権謀術数の果てにドラゴン軍は自滅するが、だから、その悪のありようは漆黒に近いものと感じていた。
本書ではそれは、色あせたまだらの黒だったのだと知らされる。

レイストリンがいかに敵方にとりいり、出世したか、いかにして力をつけたのか。
そのありさまを想像していたわけではないが、上述のような理由から、なんというか、本書の読後感としては「こんなもんか」という印象が強い。
レイストリンは寸刻も休むことなく、薄氷を、あるいは白刃の上を渡ったのだという印象を与えられたにせよ、『ドラゴンランス伝説』の試練を知った後では、また、『夏の炎の竜』や『魂の戦争』を知った後では、インパクトに欠けると言わざるを得ない。

本書はおそらく全てのドラゴンランスファンが待ち続けたものである。間違いなく一読の価値はある。
だがしかし個人的には、『魂の戦争』において、魔法を喪失したときに見せた彼の人間力が、最も強く印象に残る。物語としては、アレだが。

ところで、『レイストリン戦記』とやらは、期待していいのだろうかのう。

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