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2010年8月15日 (日)

読物 『反転―闇社会の守護神と呼ばれて』

東京地検特捜部の検事は、捜査結果から事件の「ストーリー」を作る。
概ねそれは上司の好みが反映されることになり、その意味でリテイクが繰り返される。学士論文を作成した経験があれば、「教授の指導」を思い浮かべればよかろうか。
承認されると、「ストーリー」通りの調書を取ることになる。事実を「ストーリー」に合わせるように。

著者によると、そんなふうらしい。大阪地検はそうではなかったらしい。
ここでいう「ストーリー」とは、「事実の積み重ねから浮かび上がる概略と、不明な点を想像で補完したもの」であり、我が身のような凡俗の身からすれば、事実が明らかになれば「ストーリー」は修正されてしかるべきだと考えるのだが、エラい人はそうではないらしい。承認した「ストーリー」は覆されることはないという。
犯罪者は嘘をつくものとしているからか。検事が引き出した証言は信じるに足らないということか。著者が記すような「役人根性」のみならずという印象もあるが、いずれにせよ、慣習的なことであろう。

著者の前半生たる検事時代の、そんなエピソードがまず語られ、後半生たる弁護士時代の末期、当人が無自覚な犯罪によって起訴され、かつての同僚たちに追い込まれていくさまが描かれている。
説得力があるととらえるべきか、恣意的ととらえるべきか。

許永中 日本の闇を背負い続けた男』の森功が編集協力しており、構成などになるほどと思える部分がある。インタビューを元に小説のようにシーンを描く手法はジャーナリストには基本スキルとなるのだろうか。著者の場合はインタビューではなく実経験を元にしているが、その手法を巧みに取り入れている。
著者は文筆家ではないはずだが、文章はこなれている。前半生のストーリー作成スキルの賜物であろうか。

総括すると、カネにきれいもきたないもない、とも読める。
面白い本ではあるが、一昔前の格闘家の自伝的なナニが感じられる。正直ととるべきか、品がないととるべきか。

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コメント

このところ、なかなかにコメントしづらい本が続いておりますな。ぼくちんビビっちゃってもう。

これはブックオフの100均で買いました。
書けることをやや誇張して書いている印象でした。
まあ、ボーダーで生活する人が実名で本を書けば、そうなるのはいたしかたないところでしょうかねぇ。

お住まいのところはアレコレの舞台となっております場所柄ですから、なおさらでしょうw

ご指摘のことは、恨み節の一側面であると私は受け止めました。
ある種時効が成立しているからこそ刊行できたのだろうなとも思います。

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