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2009年8月14日 (金)

読物 『実録 少林寺修行記』

入門を決めた時、過去にかつて微小な接点があったことを失念していた。
小学生の折、サッカー部に所属していたのだが、部員の一人がやっていたのだ。その彼は、小学生とは思えないブルース・リーのようなしまった身体つきで、今思えば時折、肩や背に目打ちのようなしぐさを、小学生ならではのふざけ半分なアレで行っていたように思う。

入門してすぐに、いわゆる少林拳ではないことを知ったわけではあるが、「あ、そうなのw?」程度で特に問題は感じなかった。当時、格闘技に関しては知識しかなく、真贋を見抜く素養はもっていなかったが、もちあわせた知識を総合すればどことなく柔術的であり、そそられた興味を損なうことはなかったからである。

入門しておよそ七年。準拳士となってそろそろ二年。
初心の頃よりいわゆる投げや関節技――柔法という――に関心を抱いてきたためか、突き蹴り――剛法という――には特に熱心ではなく、ようやくにして剛柔一体という言葉の意味を知り、柔法の上達のためには剛法の上達は欠かせないと理解し、おそまきながら取り組み始めたわけではあるが、上達のための手がかりが身辺に見つからない。わずかに基本の中にそれをみいだしたものの、歩法や体捌きと連携する技術が欠落しているように感じられてならない。
これは体得するべきことで特に技術というものはないのかもしれないのだが、頭でっかちの性ゆえであろうか、ただひたすらに打ち込むには年を取りすぎたということなのだろうか、なにかあるべきだという考えが去らない。

準拳士から入学を許される武専に通い、他道場の先生や先達にそれとなく訊ねてみても、得心できる回答はない。ならばと著作物に回答を見出そうとしては果たせず、今日に至る。


さて、本書であるが、著作物としては最低の部類に属する。素人の体験記でも、もうちょっとなんというか、校正が入るのではないだろうかというほどに文章がひどい。脈絡がない。しかしながら、あえてそこを真なるが故とみなすこともできる。なにぶん我が身が生まれる前のことで確かめるすべもないが、過激だった頃の少林寺拳法の一側面を知ることができる資料とみなせるかもしれない。
さておき、ただ一つだけ興味深い記述が見受けられた。

 ある日、監督をされていた板東先生が指導に来られました。
 少林寺拳法初期の突手で、肘を引き、突手というより中国拳法の型に似た印象を受けました。貫手の使い方、また、一瞬で投げつける柔法の冴えは、眼を奪います。

P.53より抜粋

故・板東先生という方は個人的に面識はないが、圧法の達人であったと伺っている。逸話を一つだけ直接耳にしており、それは我が師が若いころの体験談で、往時を偲ぶ一つのエピソードといえよう。
本山での圧法講習の際、被験者が募られたが、誰もこれに応じない。皆、知っていたのであろう。空気を読んだものの、若気の至り(師・談)で手を挙げた我が師は、「君、首は大丈夫かね?」と問われたそうである。
板東先生という方は背が高い方ではなく、まず飛びあがって手刀を首にいれたという。これで我が師は脳天に突き抜けるような衝撃を覚え、ぴよったらしいのだが倒れなかった。間髪入れず水月が打たれ、前かがみになった所、もう一度頚柱を強打され、失神したという。師曰く、「板東先生は相手が倒れるまでやる」方であったらしい。衆人の後の言葉によれば「死んだかと思った」というくらいヤバい倒れ方をしたとのことだ。
本番はそれからで、圧法の一側面である活法により、我が師は意識を取り戻した。笑いながら語られた逸話ではあるが、これが原因で頚骨がずれて、若干ながら後遺症が残ったという。

現時点で既知としている情報からは、当流におけるいわゆる中国武術的要素は意図してかせずしてか消えていったような印象を受ける。開祖はまさに中国武術的所作と技を用いていたようで、幾度か幾様の伝聞で聞かされたところによれば「もし開祖が三級の試験を受けたら、間違いなく落ちる」というものである。開祖が体現していたものと、現在の当流の体系的なものが異なるという事であろう。
少林寺拳法の技術は開祖が体得した技術を編みなおしたものであることは公式に謳われていることだが、柔術が柔道になったときに捨てたものと似たようなものがあるのではないかと邪推してしまう一つの由縁である。
願わくば、そこにキーとなるものが含まれていないことを。

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