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2009年7月16日 (木)

IT探偵

職場近所のスーパーは昼食的にNGとあいなったわけであるが、カードを作ると無料で給水できるサービスがあり、これだけは愛用している。
十代の頃フレーメンに憧憬を抱きつつそのあるべきを忠実に守らなかった報いか、水分を過剰に摂取せねばならぬ業を得た身は、暑くない時期ならインスタントコーヒーを一時間に一杯程度のペースで消費する事で足らせているのだが、暑い時期にまんじりとブラックをホットをやるほどハードボイルドではなく、人生最微の風速が525円で4リットルのボトルを購入させ、週に二度給水しこれを流し込むという実を採らせた。

給水サービスは自動装置で、カードを通すとボトルのサイズを問われ、給水中は給水率をグラフィカルに表示する。待ち時間を表示することでユーザの不快感を低減できるらしいというITマジックを知り得たのは随分昔のことだが、わりと無自覚にそれを体感しつつ、さてこれはどんなしくみなのかなと漠然と考えていた。
給水率の表示が計測だとすると、とりあえず三つの計測方法が考えられる。
・水位の計測
・重量の計測
・流量の計測
ブラックボックスはエラーを発生させることでその内実を探ることができる。
本件では、ボトルと吸水口がわずかにずれていたことが、これにあたる。実際の給水率と液晶パネルに表示された給水率が異なっているとなれば、可能性は流量に絞られるが、もう一つの可能性が浮上する。
一定水量を一定時間流出すれば、一定の容積が満たされる。満たすべき容器のサイズはユーザ自身が選択するので、あとは水を流し、時間を計測すればいいということになる。一定時間が経過したら放水を停止させる、給水率表示は経過時間にのみ依存するという仕組である。

さて。
かつてTRPGで一度だけ、図らずも探偵の役を任じたことがある。
特に深く考えず学生を選んで傍観を決め込もうとしたように覚えているが、その役によりふさわしかろう他のプレイヤーがアレすぎて、せざるを得なくなった。
このときの体感は、探偵とはなんと気軽な存在であろうか、ということだった。特に、その義務に束縛されていないときには。
事件の被害者になるリスクはあれど、状況から推測を重ね、求められればそれを開示すればよい。前置詞は「現段階では」である。うまく解決できれば栄光は独り占め。解決できなくても責任はない。
かつて『ラ○ド・オブ・ニ○ジャ』で犬死し、犬死にもカタルシスがあることを発見したのだが、それに比類する偉大な発見であった。

現在の職場では、顧客に対するカスタマイズを前提としたソフトウェアの不具合解消や新機能の開発を行っている。当初の開発者も顧客の運用者もとっくの昔にあぼーんしていて、互いによくわからないという状況をなあなあで乗り切ってきたらしいクウキを察しつつ、このギョーカイでそれなりに飯を喰っていれば、仕様書とかほにゃららでも、まあ、なんとかいける。
二ヶ月半も経てばだいたいのことは把握できて、ずいぶんとフレキシブルなシステムであることを実感している。フレキシブルであることは、仕様的バグであるか、顧客要望であるかのいずれかだが、本件はどちらかというと後者のようである。
特定の得意先で数字があわない、という現象はままあること。だが、それを担当せざるを得ないというのは、あまり嬉しいことではない。数字が絡めば顧客は鬼になるし、つまりは気楽でも無責任でもいられないということだからだ。
証拠品はデータの現状。そこからまずシステムの不具合を疑い、疑いつつ、数値がいかに獲得されるかを検証する。システムが正しいとすれば、運用の抜け道、システムの仕様的バグが介在した可能性がある。この場合、顧客のオペレートを推測することになる。このブラックボックスの中身を推測することは、得てして困難な事態であることが多い。
探偵が、推理を他者に聞かせるシーンがある。あれが、他者に自らの英知をひけらかすだけのものではないとすれば、語りつつ自らの推測を深め、インスピレーションを得るために行っているのではないかと考えることもできる。
他者が理解できるように話すためには、自らが理解していなければならないからだ。

武術の技も然り。
説明することで自覚を得て、知らぬ間に身についていたものを確認する作用がある。
同門の、オーケストラをやっている初段の大学生がつい先日、そんなことをもらした。このことは、随分と前から語って聞かせていたのだが、理解を得られぬままに語っていたと知ることは虚しさを募らせるものである。
自らに照らし合わせてみれば、いつか聞いた言葉が押すスイッチもあるだろうということになろうか。

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