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2009年6月21日 (日)

読物 『腸は考える』

数学-あらゆる学問の根底にして始原。もっとも厳密で華麗な学問。まさに学問の女王。
物理学-自然科学の王者にして現代科学の代表者。この自然世界の理論的な解明を担う。また、新しい数学理論、計算理論の創出にも貢献。学問の大様。
情報科学-現在の形而上学。計算現象の解明と論理世界の創造を担う。自演まがいの預言者。そのくだらなすぎるくらいの厳密性は数学でさえちょっと引く
天文学-最古の学問にして、自然科学の黒幕。もはや殿堂入りかと騒がれるが、宇宙時代到来をまえに最新工学を武器に手のとどかない時空を探る巡礼者。
地球惑星科学-地球近傍系の学理をあらゆる学問を駆使し探求。気ままなスナイパー。普段は何をしてるかわからないが、狙った獲物は逃がさない。
化学-錬金術師にして物質世界の創造者。物質の相互作用と創造を担う。長い伝統のためか普段は大人しく見えるが、科学界のキャスティングボードを握ってる。
生物化学-生体の機能的解明者にして、科学界の奇術師。新たな時代のNewTypeを創造。現在のトップランナー。
生物学-生物の存在論的解明者にして、科学会の吟遊詩人。生物の存在の根拠と道筋を魅惑的に、でも勝手気ままに、歌い上げる
地学-現代の博物学。科学界の長老。若い者は院から宇宙、地球近傍系へと飛び立っていくが、培った博物学的センスを伝え語り継ぐ。科学界の公証人

2ちゃんの古典的コピペ


きっかけは、より高い志を持つ同門の士のサイトにて、血液型に関するコラムを読んだことだった。
体の運用について乗馬やスキーに通じるところがあることを述べる一方、「血液型を決定する成分は脳の神経細胞に接触しない」という学説を述べた上で「血液型による性格分類はある」派であると公言した同氏は自身を生物屋と称している。
同コラムは、専門的な知識をお持ちの方々には「門外者にとっていささか乱暴な切り口ではないか」と批判される向きもあるようだが、個人的には諧謔と受け止めており、新書の類に着手する姿勢を維持しつつ楽しんでいる。

件のコラムは血液型による性格分類からはじまり、その是非はさておき、血液型により免疫力に差異があることを紹介し、「腸は免疫の司令塔」というハナシから、本題に飛躍する。

「腸は他の組織に比べて脳とのネットワークが薄い。それは腸が独自の調節系を持っているからだ。実際にも脳はなくても腸はあるという生物がいる。」

血液型と腸が免疫を介して関連性をもつらしいことを示した上で、

腸と感情には密接な関係がある(気がする)」と結ぶ。

「胃腸には発達した独立した神経系がある」→「感情・性格に影響を及ぼしているかも」と思う、と。血液は脳に直接接触しないらしいが、腸はそんなことはない、と。


さて、腸で考えるといえば、『マクロスF』のネタのひとつである。観賞した当時、ささっとWebを巡った覚えがあり、まったくのフィクションではないらしいことをさらっていたが、それきりになっていた。同コラムで本書のタイトルを目にして興味を覚えたのは、そんな前段があったためだろう。


本書の雰囲気として特筆すべきは、まず楽しそうであること。楽しさのあまり、門外漢の追従を放棄していること。噛み砕こうという配慮は見受けられるが、あえて閾を設けているのか、わかりやすくはない。前者については、おおよそ世間的な象牙の塔の印象を改めるものであり、後者については新書本によくあるケースということになろうか。
同著書発行まで20年有余年、免疫学の発展、ホルモンの発見、脳と腸にそれぞれ別個に同じホルモンが分泌されるという事実が明らかになり、腸は小さな脳と呼ばれるようになったそうである。高等脊椎生物から始まった研究は他分野の共同研究者を得て無脊椎高等生物に至り、共通の始祖である原始生物へと到達し、得た推論は進化の過程で脳は腸から誕生したというものである。

『マクロスF』のファンタジックなアレンジはおそらく、腸で思考するというキャッチーなタイトルから得たものであろうという妄想はともかく、研究過程での紆余曲折、転機などのエピソードは個人的に観測し得た研究者像を補強するものであり、最近はそうでもないが、フィクション作品にかつてみられた一般的な研究者像という記号はほんの一部のものにすぎず、その他実像の一部は非常にパワフルで、研究一辺倒ではなく遊びにも同程度の情熱を傾けるものであり、『最新』の技術がエンターテイメントに反映されるまでにかかるであろう期間と同様に、世間に流布するまでに時を要するものであるらしいことを察した。

余談だが、同書における最大の収穫は、シンポジウムというギリシャ語の意が「一緒に酒を飲む」であるということを知り得たことである。

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